Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

七

籠城兵はすぐ、

「ああ、どうしたんだろ、援軍の到着は。おれたちを見殺しにするのか。来るのか、来ないのか」

と、空を仰ぐと嘆息となった。

「もう、来なくてもいい。おれは、煙の出る飯を一杯喰いたい。それを喰ったら死んでもいい。仏壇に上げる飯を、何とか今のうちくれないかなあ」

「ばかっ、日が暮れたぞ。また、今夜も敵の夜襲だ。しっかりせい」

「今夜あたりは、意地でもうごけまい。腹がすいて、胃ぶくろの暴れぬくうちは、まだ体をうごかすとそれを忘れて戦えたが――」

暮れかけている塹壕の上へ、凛々しい髪止めをし、襷をかけた婦人たちの一群が、数箇のバケツをさげて降りて来た。

「皆さん! 兵隊さんたち! お味噌汁ですよ。腹いっぱい召しあがって下さい」

「えっ、味噌汁?」

わっと歓声をあげた。バケツと柄杓、婦人たちの配る椀など、間にあわないほどである。

焦くさくて土の交じっているような塩気のうすい味噌汁だ。だが、何か実もはいっている。夢中でふウふウ啜っていた兵隊も、意外な汁の実に出会って一層どよめいた。

「何だ、何だ、この汁の実は」

「青い菜でございます。皆さまが、さだめし青い物に渇いていらっしゃるであろうと、谷司令官の奥様が、わたくし達を励まして、きょうの激戦の中を、西出丸の空地まで出て、懸命に摘みあつめて来たのです。