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Japanische Klassiker mit Furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

「なに、あの者たちへ、火鉢を与える? ……。以てのほかな!」

と、たしなめていた。

「火鉢はおろか、公儀のお預け人。あの衆と、雑談なども、かたく無用でござる」

伝右衛門は、物頭役で、藤兵衛よりはずっと末席だった。老人というほどでもないが、小鬢には白髪が見え、温良な眼皺のなかに、親しみぶかい眸をもった人物だった。ふだんは、上役の者へ、逆らったことなどはない性格だが、まざまざ、彼の顔に不平ないろが燃えたので、藤兵衛はまたいった。

「料紙硯だけはゆるしたが、風呂の事、櫛道具の事、医薬その他、箇条にいたして公儀へ、お伺い中じゃ。必ずと、勝手な処置、相ならぬぞ」

「心得ぬことを……」

伝右衛門は、吃った。

「なにが心得ぬ」

「御家老には、あの衆は、ただの囚人とでも思し召してか」

「お預けの罪人、囚人に相違なかろう」

「罪人」

伝右衛門は、眼に涙さえもって、心外そうに、

「武士は勿論、お台所の御用にまいる町人や、お坊主の端くれまで、義士よ武士道の華よと、世間を挙げて、賞めおりますあの衆に対して」

「だまんなさい。罪は罪」

「御家老は」

「だまらぬかっ。私情をもって、御法を紊しなどしては、天下の御政治は元より、一藩のしめしがつかぬ」