Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
下頭橋由来
飯櫃
飯櫃
十八になるお次が、ひとつの嫁入りの資格にと、巣鴨村まで千蔭流の稽古に通い始めてから、もう二年にもなる。
その間ずうっと、彼女は家を出るたび帯の間へ、穴のあいた寛永通宝を一枚ずつ、入れて行くのを忘れた日はなかった。
「あんな、張合いのある乞食ってないもの――」
と、自分の心へ言い訳する程、彼女はそれを怠らなかった。
河原から憐れっぽい眼を上げ、街道の旅人へ、毎日、必死に頭を下げているお菰の岩公が、自分の姿を仮橋の上に見ると待っていたように百遍もお辞儀をする。
「――あんな一生懸命なお辞儀って、誰だってしやしないもの」
と、それを受けるのも、楽しみだった。
きょうも、石神井川にかかって、
(岩公、いる?)
と、お次は、下を覗いた。
一ぺんも言葉こそ交わしたことはないが、きょうは岩公が何か欣んでいるか、考えているか、体の具合がいいか悪いか、お次にはよく分った。
(あ。お嬢様)
岩公も、大家の娘へ、声をかけては悪いと思うのか、眼で、眸で、お辞儀だけで、もうその姿へ呼びかけた。
ぽちゃん、と仮橋の下で、小さな水音がした。
「あら」
あわてて、お次の手は、髪へ行った。