Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
二
右門は、自分のしている事は、兄の罪ほろぼしであり、殺伐な一門の後生の為であると信じていた。
家来がそれを、ある時、十兵衛に告げると、十兵衛は、片眼の落ちた顔に、実におかしそうな皺を湛えて、
(そうか。それは右門には、よい手鞠が見つかったな。あれはちょうど、鬱気な猫みたいに、いつも眸が空虚な男だから――)
と、笑った。その後もひとりで思い出しては笑っていた。
二
自分だけが妾腹の子という――幼少からの負目が、自然彼をそうさせたのかもしれない。――右門の眸は、十兵衛が嗤うとおり、人に対して、いつも弱々しかった。
体も、丈夫ではない、腺病質の方である。
その点では、次男の刑部友矩と、よく似ている。気性も友矩といちばん合う。だが次男友矩は、家光の寵童となって、柳営の小姓組に上がっている。年に何度という程しか屋敷へは戻って来なかった。
我昔所造諸悪業
皆由無始貪瞋癡
従身語意之所生
一切我今皆懺悔
――右門は今、無縁の石に向って、掌をあわせながら、口の裡で何度も唱えていた。生れつきの仏性というのか、写経していたり、こんな瞑目の境にある間が、いちばん自分の魂が、在るところに在る心地がした。