Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
毛虫桜
一
けれど、水戸へ近づくと、そこの城下に残されている同志たちの家庭が眼にうかんで心が暗くなった。
良人に残されて孤屋を守る妻や――父を慕って夜泣きする頑是ない子達や――年老いて子に先立たれてゆく親達や――
「ああ、これで、世の中がよくならなかったら……」
彼は、桜田で散らした自分たちの血しおよりも、そこの大きな犠牲を考えて、悲憤の醒めきらない眼を、青い星に向けて呟いた。
幾夜の旅の後に、彼は、笠間峠のいただきから、なつかしい城下の灯を遠く見ていた。
しかし、その城下へは、元より一歩も入れない身だった。
唯、お城の方角へ向って、額ずいてそこを去った。
行く先々で、巷の風聞が耳に入る。――それに依って、彼は、自分と行動を共にした十七名のほとんどが、事変の直後、自刃したり、捕われたりしてしまって今なお星の下に生きているのは、自分の他に二、三名しか残っていないことも知った。
毛虫桜
一
血縁の家である、それでなくてさえ、世間は疑いの眼を向けたがっているのだから――と、粂之介はいう。
「そなたも、他へ嫁がなければならない身だし、嫁入りの障りになる。……お互いのためを思って、もう足踏みしてくれるな」