Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
十郎左
お預けの身になって、二、三日の間は、瞼をつぶると、白い雪と、刀とが、ちらついて為方がないと誰もが同じことをいったが、次には、やがて来る死に対して、深刻に、考えるくせがついた。若い人々ほど、それを考えた。老人は、同時に、自分の生涯の出来事から死までを、毎晩、絵本でも繰るように憶い出し、咳声のやむのと同時に眠った。
けれど、ほど経つと、もう考える問題が何もなくなった。死は、白い紙を見るように当り前な観念になった。――床に入って寝つくのが、誰も早くなって、すやすやと十七人の寝息がそろった。そして、その一つ一つの小屏風のうちへ、四家の大名に分れて同じ境遇にある我が子や、友や、また故郷の母や、兄弟が、夢になって、こっそりと、忍びこんだ。
十郎左
朝。
ああまだ俺は生きている。
陽を見ると、誰もそう思った。ゆうべの夢を話す者はなかった。
よほど、欣しいことがあるとみえて、伝右衛門が、にこにこ顔で、何か抱えて来た。
「御一同、今日から、お煙草のおゆるしが出ましたぞ」
これは、確かに、福音だった。
ここにいる者、ほとんどが、煙草ずきだったが、大守の越中守は煙草嫌いで、禁煙は、藩風のようになっていた。