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Japanische Klassiker mit Furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

――だが、夜だし、もうあそこにいるかいないかを疑問にしながら、その夜更け、駒を家路へ向けてゆくと、金杉橋は真っ暗だった。

番屋をたたいて、訊かせると、やはり、彼女は伝右衛門を待っていた。

だが、もう生ける人ではなく。

あれから、番屋の者の隙をねらって、すぐ表の川へ、身投げをしたというのである。そして、何か、手紙を抱いてるし、昼間のことがあったので、死骸に菰をかぶせて、再び、伝右衛門が通るのを待っていたともいった。

「どれ……。会おう」

番太郎は、菰をめくった。白い顔が、馬上の伝右衛門に、いつもの眼を向けているように仰向いていた。そして、その胸に、かけてある、紫縮緬の頭巾は、隅の所が、五寸ほど、四角に切りとってあった、――ちょうど伝右衛門が懐中に持って来た、琴の爪をつつんである小布ぐらいほど、欠けていた。

「よし、この死骸は、わしがひきとる」

伝右衛門は、彼女の抱いていたという手紙だけを、袂に入れて、蹄の音もやや軽く、家へと、駒を急がせた。

馬のそばに、駈けている、若党や仲間には主人の気持が分らなかった。――で、やや彼の面が、冴えたのを見上げて、

「旦那、あの女は、一体、なんでございます」