Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
心耳心眼
ただ徳川内府のお覚えのみを気がねして齷齪と、夜半まで駈ける小心な大名どもの肚の底が見え透いて愍れが深い……。あはははは、思うても暑いことだな」
心耳心眼
「左近。まだか」
治部少輔三成は、佐和山の一室で、陽が薄れるともう待ちわびていた。
石田には過ぎ者――とさえ死んだ太閤が云った島左近が、ただ一人、今日の侍側をゆるされて、次の間にいたが、
「あ……お見えのようで」
と、出迎えに立った。
湖水はまだ明るかった。湖北の山々や、対岸の叡山、四明ヶ岳などは、もう夜の黒い相を纒っていたが、城の大廊下には、水から映える青い夕明りが板を流れている――
「よい城だの」
賞めながら、大谷刑部は、侍臣の手に、指の端をほんのわずか持たせて、歩いて来た。
「――背に、伊吹の嶮、北国東海の二道を扼し、舟路一駆すれば、京は一瞬の間にある。――しかも、平和を愛して、自適するにも、絶佳の景」
見えでもするように、湖のほうへ、また、城の庭へ顔をうごかしつつ、
「ここか」
と、着席する。
すぐ、三成が見えて、
「刑部、久しいのう」
「おう……」
声のほうへ、刑部は顔を向け、
「治部か、一別以来」
と、すこし頭を下げた。