Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
水戸を、骨髄に怨んでいるその人々のあいだに、桜田事変の生存者があると知られている以上、当然――海後磋磯之介の旗岡巡査は、絶えず、背後からある者に脅かされずにいられなかった。
生命の危険さえ感じられた。不審な将士に、狙け廻されて、刃を擬せられた事もあった。
だがしかし、旗岡巡査の無感激や無表情や、また、偏屈なような性格は、そういう恐怖から来たものではなく、日々に見ている社会の眩ゆい変遷が、自ら彼を懐疑の唖にしてしまったといってよいのである。
東京でも見た。
この横浜でも彼は見ている。
金モールを載せて轣轆と帝都を駛る貴顕大官の馬車や、開港場の黄金時代に乗って、大廈高楼に豪杯を挙げている無数の成り上がり者をながめて――一体、こういう人間を作るために、維新は幕末の永い間を、あんなに幾多の尊い人血をながしたのだろうか。桜田の事変は行われたのだろうか。これが、地下に白骨となっている多くの志士たちの求めていた理想の社会だったろうか。
旗岡巡査は、分らなくなるのである。
わかろうとすれば、頭脳が悪くなってしまう気がした。いや、生きていられなくなって来る。
修養のように、努めて彼は今の性格をこしらえ上げたのかも分らない。