Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
そして口にふくんでいた薬を、水と共に、がぼっ――と闇へ吐き出した。
「たか女」
と、老女の名を呼んだ。
「はい」
「この薬、いずれから持って来た」
「いつもの、お手筥の薬嚢から一錠取って参りました」
「書斎の本箱の上のか」
「左様でござりまする」
「手燭をつけてくれい」
但馬守は、そこから二間ほど先の一室へ這入って行った。――そして一見、何の変りもなく見える部屋の隅々までを見廻していたがふと膝を折って、指の先で軽く畳を弾いてみた。
畳の目から、微かな、白い粉が浮いて出た。彼は、思うところと符節の合ったようにうなずいた。
二つ目の本箱を開けた。細かい棚に、絵図や書類が整理されてある。大目付に就役以来の物ばかりが入れてあるので、あるべきはずの書類の何通かが失くなっていた事も、一目ですぐ気がついた。
「喜内を呼べ。――躁がずに、静かに」
老女は、でも、色を変えて走らずにいられなかった。喜内はすぐ飛んで来た。
「殿。――何事が起りましたのでございましょうか」
「大した事ではない。はやくそちにいうておけばよかったが、公務のみ一念に、家の些事はと、顧みもせず、打捨てておいたのがわしの落度。