Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
芝居そのものが若い女になりかかっている伸子を感動させたばかりでなく、その小劇場の観客たちの雰囲気が、伸子に、からだの顫えをとめられないような歓喜と好奇とを与えた。二十九歳の伸子は、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の十二月の夜の粉雪の街をホテルに向って歩きながら、そのときに似た感銘で、顫えた。その感情は新鮮で、皮膚が痛むように感覚的で、同時に人生的だった。発光体のようになった小さい円い顔に、伸子は、うっとりと思いこんだ表情をたたえながら、我知らずホテルの室のなかまで素子の腕につかまって来てしまった。
今夜は伸子たちの室で、お茶にすることになった。茶道具が註文され、秋山と内海が集って来た。
「――どうでした」
伸子や素子の感動している顔を見まわしながら満足そうに秋山が中指にインクのしみのついた小さい両手をすり合わせた。
「М・Х・Тだけのことはあると思われたでしょう」
伸子と並んで余りかけ心地のよくない堅いバネなしの長椅子にかけ、タバコばかりふかしている素子に、瀬川がきいた。
「吉見さん、感想はどうです」
「ふーむ」
素子は、美しい顔色をして、自分に腹を立てているように、ぶっきら棒に云った。