Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

「吉ちゃんの云っているようなことが御大にきこえたら、とんだおしかりもんだろう」

だまって笑っている吉之助に向って素子が、

「あんたがた、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来る前に一場の訓辞をうけたって、ほんとですか」

ときいた。

「左団次が一同をあつめて、ロシアへは芝居をしに行くんだっていうことを忘れるな、赤くなることは禁物だって云ったって――」

吉之助はあっさり、

「そんなこと云わせるものもあるんですね」

と答えた。

「こんどこっちへ来るについてだって、それだけの人間をひっこぬかれるんならいくらいくらよこせって、会社側じゃ大分ごてたんだっていうじゃありませんか」

素子の話に答えずしばらく黙っていた吉之助は、

「歌舞伎も何とかならなくちゃならない時代になってます。ともかく生きてる人間がきょうの飯をくってやっていることなんですから」

やがて時間がなくなって、長原吉之助はさきに席を立った。

柄の大きい、がっしりした吉之助の背広姿がドアのそとへ消えると、素子は感慨ぶかそうに、

「歌舞伎生えぬきの人がああいう心もちになってるんだものなア」

と云った。

「案外、云わせてみりゃ、ああいうところじゃないんですか」