Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
女は憤懣にたえないらしく、はげしい身ぶりで片手をふった。
「わたしとお前さんとはまるきしちがうじゃないか。こう見たところお前さんはまだ若い――」
首をのばして伸子の顔を改めて見直して、
「まるでまだ娘っこみたいなもんじゃないか!」
伸子は、思わず笑った。
「ところが、わたしはどうだね。わたしはもう四十四だよ。うちには、去年生れの赤坊を入れて五人子供がいるんだ。わたしは、あいつらに食べさせ、着させ、体を洗ってやって、その上勤めているんだ――わたしは掃除婦だからね。それに亭主だって――亭主だって見てやるもんがなけりゃ、どうして満足に働きに出られるかね。――わたしは、お前さんとはまるきりちがうんだ。わかるだろう?――どうして、わたしがお前さんと同じように辛抱づよくなれるかってんだ――世帯も持ってなけりゃ、亭主もなけりゃ、乳呑子だってないお前さんのようにさ。――お前さんにゃてんで心配の種ってものがないんじゃないか」
粗野な女の言葉のなかに真実があった。伸子には心配の種がないんだ。ソヴェトの働く女というより古い、ロシアの下層の女のままな彼女の暗い不安な、人を信用しない感情には、医者のいうことも疑わしければ、苦労のなさそうな日本の女を手本にひっぱり出されることにも辛抱がならないらしかった。