Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「――いいわ。もう心配しないで」
しかし、その晩ベッドに入ってから、伸子は長いこと目をあいていた。廊下の明りが、ドアの上のガラス越しに、灯の消えた自分たちの室の壁の高い一隅に映っている。スティーム・パイプのなかでコトコトコトと鳴る音がするばかりで、素子のベッドも、あっちの壁際で、ひっそりしている。
素子が、発音のことからあんなに神経をいためられた。そのことに、どこまで自分の責任があるのだろう。伸子はそこがよくわからなくて、眠りにくかった。伸子にわるいところがあるとすれば、それは、このモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の新しい生活で素子を押しのけようとすることではなくて、反対に、ここの生活に対する伸子の興味があんまりつよいためについ言葉のわかる素子にたよろうとする傾きがあることだ。実際モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の朝から夜までの生活は、狭くせつない一本の壜づめのようだった伸子の精神を、ひろいつよい外界へ押し出した。佃と結婚し、それに失敗し離婚してから。更に素子と暮してからの数年、伸子の二十歳以後の存在は一本の壜のようだった。せまい壜の口から、伸子のよく生きたいという希いで敏感になっている漏斗をこして、トロ、トロと濃い生活の感銘が蓄積されて来た。