Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
四
酒が好きなので、今夜も町へ出て、独り飲む寝酒をそっと買って来たものらしい。一刀斎の眼にふれないように、それを土間の隅へおいて、何喰わぬ顔して框から上がりかけると、
「善鬼か」
と、奥で師の声がいう。
「はい。善鬼でございますが」
「外にいた若い男はもう帰ったか」
「いつの間にか、消えて失くなりました。何事かあったので?」
「たいしたことじゃない。風呂に入ったか、おまえは」
「これからでございます」
「わしは寝る。そちも風呂をいただいてすぐ寝め。あすは常のように夙く立つぞ」
一刀斎は、そういうと、夜具のうちにはいったらしい。
善鬼は風呂場へ行って、湯を浴びていた。
すると、彼がそこから出て来るのを待っていたように、垣の蔭から走りよった人影が、彼の足もとへ額いた。
「おねがいの者です。憚りながら、しばらく愚存をお訊きください」
「だれだい。……何だ?」
「それがしは、神子上典膳という若輩です」
「あ。いまし方、そこらをうろついていた男か」
「お嘲いください。実は、身のほども弁えず、一刀斎どのへ、仕合を乞い、強かに打ちすえられて……ようやく夢のさめたるごとく、自分の至らなさを今初めて知りました」