Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
西郷以下、本陣にある幕僚も、もう時間の問題としていた。敵が鎮台を出て降るか、全山を自爆して玉砕と出るか。今日にもあり得ることと信じていたのである。
十四
蜂の巣のような弾痕だ。狭間の壁に、太い柱に。なお、屋根の鯱や廂の瓦などが吹飛んでいるのは砲弾の炸裂によるものであろう。
「児玉少佐。花は咲いたが、今年だけは、春爛漫という辞句は当らんな。満目の春泥みな荒涼じゃ」
司令部の宇土櫓に立って、久しぶりに晴れた視野をながめていた谷将軍は、児玉参謀を顧みて、髯だらけな中から白い歯を見せた。
「将軍のお顔もですな」
「髯か。いやこうなると、自分に顔というものがあることすら忘れとる」
「私は、胃袋のあるのも忘れとります」
「ははは、近頃はほとんど、金の粥(粟粥のこと)も、銀の粥(米の粥)も入らんからのう。病院の傷病兵へはどうしておるか」
「病人負傷者だけには、極めて少量ですが、日に一度は金の粥を給与しております。御安心下さい。――が、三千の人間で喰べるというのは怖ろしいものですな。この山には青い木の芽もありません。死馬の肉も尽きました。今に畳も壁も喰わねばなりますまい」
「谷村はどうしたろうか。