Japanische Klassiker mit Furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Lesen Sie 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.479 Zeichen · 394 Bildschirme
物事内輪へ内輪へとひそめ、出しゃばることをひどく嫌った。容貌は非常に高尚で、キッパリした富士額、細面で中高の顔、地蔵眉、澄み切った眼――といって決して冷淡ではなく、あまりに邪心がないために、一点の濁りさえ見られないのである。はたして旗本の娘だろうか? あまりに貴族的の鼻ではないか、こういいたいような鼻の形。くちびるはいちごのように小さく赤い。どこにともなく神性があり、処女という言葉の具象化が、すなわちお京だということが出来る。燃えるほど広太郎を愛していても、いいなずけの金弥を退けようともしない。
寝についても眠られず、昼間角目立って口論した、広太郎とそうして金弥とのことが、心にかかってならなかった。それでも午前二時頃になると、うとうとと眠気がさして来た。と、その時間近いところから「お京!」と呼ぶ声が聞こえて来た。
「どなたか妾を呼んでいる」こう思った時また、「お京!」
それはそとから来るらしい。ふすまを抜け出し雨戸を開け、裏庭をのぞくとよい月夜。と、また「お京!」と呼ぶ声がする。「はい」というと、はだしのまま、スルスルと庭へ下り立ったが、裏門の方へフラフラと行き、門を開けたのも無意識であった。