Japanische Klassiker mit Furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Lesen Sie 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.479 Zeichen · 394 Bildschirme
見えぬ敵
「よし」というとその人影、かがり火を目がけて走り出した。と灌木の茂みから、二、三人の人影が現われた。
「これ、貴様、何者だ」抜き身を突きつけて取り巻いた。
「へい、私は里の者で」
「うむ、そうか、どこへ行く?」
「天草殿に逢いたいので」
「ははあ貴様、間者だな」
「いいえそうじゃアございません、天草殿にお目にかかり、お話したいことがございますので。どうぞ陣所までお連れなすって。へい、大丈夫でございます、刃物一本持っていません」
「そうか」というと二、三人の者、何か互いに耳打ちをしたが、
「よろしい、それでは案内して進ぜる」
二人の武士が左右につき、篝火の方へ歩きだした。
篝火に近づくに従って、白い物が見えてきた。張り廻された陣幕である。
見えぬ敵
陣幕の中央に床几がある。天草時行が腰かけている。なんの武装もしていない。例によってきたない爺いである。さけたみつ口から歯が見える。左手にいるのは築土新吾、鎖かたびら、籠手脛当、陣羽織をはおっている。その外には誰もいない。ひどくサッパリした陣営である。槍が一本立てかけてある。そのほかには武器もない。いやいや一個恐ろしいものが、陣幕の隅に据えてある。