Japanische Klassiker mit Furigana
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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
Lesen Sie 剣侠受難 (けんきょうじゅなん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.479 Zeichen · 394 Bildschirme
正雪と時行
続いてアッという声がした。声の主は八左衛門、忠弥に投げられた大杯で、額の真ん中をわられたらしい、タラタラと血潮がしたたった。「これは狼藉」と一同の者、総立ちになろうとした時である。
「騒々しいの、静まらっしゃい!」りんとした声が響き渡った。
正雪と時行
声を掛けたは由井正雪、陣幕に染め出した菊水の紋、それをうしろに篝火を左右、ずっと離れた上座の位置に、円座を敷いてすわっていたが、顔は桃色、微醺を帯びている。「丸橋氏、不謹慎でござる! ……奥村氏、気にされぬよう。……ああ柴田氏柴田氏、丸橋奥村のご両所を連れて天草殿の陣へでも参り、よろしく和解おさせください」
いわゆる鶴の一声である。柴田、丸橋、奥村ほか、五、六人がゾロゾロと、陣幕の外へ出て行ったが、あとはヒッソリと白け渡った。
正雪の前に老人がいる。ほかならぬ天草時行で、自分の陣屋からコッソリぬけ出し、遊びに来たという格好である。
「お若い方は勇敢で」こんなことをいい出した。「が、ちと面白くござらぬな」
「さよう」と正雪眼をひそめたが、「丸橋氏の軽率と短気、困ったものでございます」あたりをはばかった小声である。