Japanische Klassiker mit Furigana
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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
Lesen Sie 平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕 (あるたんぼうきしゃのはなし) von 平林 初之輔 (ひらばやしはつのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.247 Zeichen · 229 Bildschirme
妾は短い赤い袴の下から白い絹の靴下を見せ赤いモロッコ皮の靴を緋色のリボンで結んで、わざとショールをひろげて肩を出し、アカシアの大きな花束を肌衣の外へはみ出させて、口にもアカシアの花をくわえながら、コケティッシュに腰を振って多勢のスペイン女の中をかきわけて左手から舞台へ出ました。舞台の中央には、派手な伍長の制服をつけた谷村のホセが工場の門の傍の腰掛にかけていました。
そのうちに芝居は進行して、――妾を逃がして下さらないこと? という台辞のところまできました。
――ここにこうしてるのは冗談をいうためじゃない。さあ牢屋へ行くんだ、これは命令だからね、どうにもならないんだ。
――まあ、なつかしいわ、貴方妾の郷里の方ね?
それから妾のカルメンはありとあらゆる言葉をもって、ぶきっちょな、正直な谷村のホセを動かしてしまったのです。
妾は妾の短い舞台生活の経験では、この時位あとから考えても満足に妾自身を表現することのできたことはありません。妾の口からなめらかに流れて出る言葉で、武装したホセの心がだんだんほどけてゆくのが妾自身そばにいてわかるくらいでした。妾は芝居をとおして妾の心を誰にともなく投げつけていたのです。