Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
たといそのままにして置いたところが、一月とは持つまいと思われる容体である。若し、患者が手術に堪えて、怖しい腫物の切り離された姿を見ることが出来たならば、たしかに患者の心は救われるにちがいない。
「よろしい。望みどおり手術をしてあげよう」
と、私ははっきりした声で言い放った。
二
「気がついたかね? よかった、よかった。手術は無事に済んだよ。安心したまえ」
翌日の午前に行われた手術の後、患者が麻酔から醒めたときいて、直ちに病室を見舞った私は、白布の中からあらわれた渋紙色の顔に向って慰めるように言った。寝台を取り囲んで細君も看護婦も不安げに彼の顔をのぞきこんだ。
「有難う御座いました」
と、患者は、まだかすかにクロロホルムのにおいをさせ乍ら答えた。
「静にして居たまえ」
看護婦に必要な注意を与えた後、こういって私が立ち去ろうとすると、
「先生!」
と患者が呼んだ。この声には力がこもって居て、今、麻酔から覚めたばかりの人の声とは思えなかった。私はその場にたたずんだ。
「御願いですから、できものを見せて下さい」
私はびっくりした。患者の元気に驚くよりも、患者の執念に驚いたのである。