Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
五
そうして、世の中が案外住みよいものであることを悟って、生に対する執着が一層深められて行った。深められて行くと同時に敏子に対する恋が頭を擡げ始めた。彼は敏子に急に逢いたくなった。逢ってもう一度、彼女の反省を乞おうと思った。彼は死んだ京助に対しては少しの同情をも感じなかった。そうして京助が死んだ以上、敏子も、この前のような、呆気ない態度には出るまいと思い、一日も早く敏子に逢いたいと思った。
けれど敏子の行方は誰も知らなかった。あんまり深入りしてたずねるのも気がひけたので、彼は敏子が帰るまで毎日訪ねて来て様子を見ることにした。
五日過ぎ、七日過ぎても敏子の家は閉されたままになって居た。逢えぬと思うと益々逢いたくなった。漸く二週間目に、彼は敏子が帰って来て居ることを知ったが、日中、何となく恐ろしいような気がしたので、夜になるのを待ちかねて、久し振りに、馴染の深い玄関のベルのボタンを心臓の動悸を高めながら押すのであった。
五
「まあ、雉本さん、よく来てくれました。きっと来て下さるだろうと思って待って居たのよ」
と、敏子は自分で玄関まで出迎えて、嬉しそうな顔をして言った。