Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
死の接吻
一
一
その年の暑さは格別であった。ある者は六十年来の暑さだといい、ある者は六百年来の暑さだと言った。でも、誰も六万年来の暑さだとは言わなかった。中央気象台の報告によると、ある日の最高温度は華氏百二十度であった。摂氏でなくて幸福である。「中央気象台の天気予報は決して信用出来ぬが、寒暖計の度数ぐらいは信用してもよいだろう」と、信天翁の生殖器を研究して居る貧乏な某大学教授が皮肉を言ったという事である。
東京市民は、耳かくしの女もくるめて、だいぶ閉口したらしかった。熱射病に罹って死ぬものが日に三十人を越した。一日に四十人ぐらい人口が減じたとて大日本帝国はびくともせぬが、人々は頗る気味を悪がった。何しろ、雨が少しも降らなかったので、水道が一番先に小咳をしかけた。日本人は一時的の設備しかしない流儀であって、こういう例外な暑い時節を考慮のうちに入れないで水道が設計されたのであるから、それは当然のことであった。そこで水が非常に貴重なものとなった。それは然し、某大新聞が生水宣伝をしたためばかりではなかった。氷の値が鰻上りに上った。N製氷会社の社長は、喜びのあまり脳溢血を起して即死した。