Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
あさ子はその藁人形を、左の手で老松にぴったりあて乍ら、右手で袂から一本の銀色に光る釘を取り出した。いう迄もなく良雄になぞらえた藁人形を松の木に磔にしようとするのである。あわや、彼女の右手がその藁人形をぐさと突き刺そうとしたとき、あさ子の右腕は丹七の手によってささえとめられた。
「あさ子、何をする」
「お父さん! わたしくやしい」
こう言ったかと思うと、あさ子は崩れるように父親にもたれかかり、両袖を顔に当てて、声をあげて泣くのであった。
丹七はあさ子の失恋に同情するよりも、「丑の刻参り」の真似をするわが子の心の怖ろしさに戦慄を禁ずることが出来なかった。樹間をもる月影に照されたあさ子の、波打つ肉体の顫律を感じたとき、丹七は二十年の昔、河の中から引き上げられたあさ子の母の死骸に触れた時の感じを思い起してぎょっとした。
あさ子も母の血統を受け、思いつめたあげくに、万一のことを仕兼ねないかも知れぬと思うと、全身の血が凍るように思われた。
「風邪を引くといかん、早く帰って寝ようよ」
丹七はやっと、あさ子をなぐさめて、冷たい寝床にかえるのであった。
このことがあってから、悲しくも丹七の予想があたって、あさ子の精神に、段々異常の徴候があらわれて来た。