Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
今、下宿へかえってからでも、なお胸の動悸は去らなかった。で、彼は畳の上へぐったりとして寝ころんだが、それと同時に一種の不安が彼を襲った。
果して医師がコレラと診断するであろうか。
ここまでは自分の手で首尾よく事を運んで来たが、これ以上は他人の手を待たねばならない。万が一にも、医師が誤って、正しい診断を下したならば、それこそ、あまり呑気にしては居られない。と考えると、何だかじっとしては居られぬ気持になり、つと立ち上って畳の上をあちらこちら歩いたが、今更、何の施すべき手段はなかった。
いくら暑い夜でも、今までは一晩も眠れぬことはなかったのに、その晩は妙に暑さが気になって、暁方に至るまで眠られなかった。然し、彼が眼をあいた時には、夏の日がかんかん照って居た。彼は朝飯をすますなり、飛び出すようにして郊外の京助の家の附近にやって来た。果して京助の家は、貼紙をして閉されてあった。近所で聞いて見ると京助は昨夜コレラを発して死に、奥さんと女中は隔離されたということであった。然し敏子と女中とが何処に居るかを誰も知るものがなかった。
静也はほっとした。自分の医師に対する信頼が裏切られなかったことを知って、甚だ、くすぐったい気がした。