Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
刑事はやさしい口調でたずねはじめた。
「昨晩あなたは、殺人事件のあった富倉町を御通りにはなりませんでしたか」
康雄は、ぐさと、短刀で胸をさされる思いをした。
「私は富倉町が何処だか知りません」
取り敢えずこう答えて、丑村刑事はどうしてそのことを知ったであろうかと考えると、康雄ははたと思いあたることがあった。刑事は言葉を続けた。
「あなたは昨晩珍しい古本を御買いになりましたでしょう」
果して、と康雄は思った。
「好色破邪顕正という書籍、その新聞紙の包みが、ちょうど、殺人事件のあった大平氏宅の前に落ちて居たのです。今朝拾得の届出があったものですから、すぐさま手分けして市内の古本屋を調べさせると、袋町の古泉堂で、昨夜あなたが御求めになったのだとわかりました」
康雄はもう隠しても駄目だと思った。けれども、あの美しい疑問の女については語ってはならぬと思った。いわば自分の初恋の女を恐ろしい殺人事件の渦中に引き入れたくなかった。珍本の出現によって得られた安心は、恋人にふりかかって居る運命を危惧するの念に置き換えられて行った。
「私の通った町が富倉町であるかどうかは知りませんが、丸太町の辺を通って来たことは事実です」