Japanische Klassiker mit Furigana
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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
Lesen Sie 怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集 (みっつのあざ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.140 Zeichen · 396 Bildschirme
そうして思わずもその本を落して、袖をもってその白い腕を蔽った。見る見るうちに頬の血が去って、瞳がどんよりと曇った。弘の性質、行動、その他百千のことが頭にうずをまき、ただ怖ろしい感じのみが残って彼女の全身を戦慄させた。
突然、ラウドスピーカーから、明快なメロヂーが流れた。それと同時に階下に口笛の音がした。
「姉さん――姉さん」
由紀子は返事が出来なかった。
トン、トン、トンと、軽快にあがって来る弘の足音が続いて起った。由紀子はあわてて立ち上った。
「姉さん、おや、こんなところに居たね。ビリーに薬をのませてくれた?」
「いま、とりに来たところよ」
やっとこれだけ由紀子は言い得た。
「おや、大変顔色がわるい。どうしたんです」
由紀子は弘が快活であるだけ、それだけ怖ろしい気がした。
「もう直き、弘ちゃんに殺されなければならぬから」
「あはは」と弘は、由紀子の前に落ちて居る「日誌」を見て笑った。「見てしまったね。少し薬がききすぎましたか」
「え?」
「では……」
「それは僕の薬ぶくろですよ」
「…………?」
「といってはわかりませんか。而もあき袋です。僕の病気は普通の薬では治らないのです。