Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
と、全身を当惑の中に没してしまうのであった。
真意を――そして信念をも――友に告げてしまうと、三成は、後を心すずしげに、静かに、隅へ立って、茶の風炉釜に向っていた。
遠い磯鳴りのような釜の湯音のうちに、更けた夜を感じながら、二人は、しばらく、背と背を向け合っている……。
だが、刑部は三成の心を――三成は刑部の心を、じっと、互いに推し測っていた。
(うんと云うか、いやと云って帰るか?)
と三成は、湯柄杓を釜に入れる。
刑部は、
(やめてくれ! 思いとまってくれ! 今、貴様が死んで大坂城はどうなるのだ!)
絶叫したいような気持を、胸に緊りつめて。
その間に――
三成は、自分のたてた茶を、帛紗にのせ、
「刑部、不手前だが、こよいは近侍を遠ざけておるから、渇きしのぎに」
と、差し出した。
黒茶碗の中に、緑いろの泡があざやかに浮いている。刑部は、その茶のかおりを嗅ぐと、はっと、ある一つの記憶を呼びおこした。
…………
もう十余年も前になる。
まだ太閤殿下在世の盛りだった。茶会が流行り事で、大坂城でも、醍醐でも、度々秀吉の催しがあり、諸侯も側衆も、それにはよく同席したものである。