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Japanische Klassiker mit Furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme

Aozora Bunko

――だが、今はもう他人事ではなかった。大老の死は、自分たち父娘の苫の下へも、忽然と、泥のような波を挙げてきた。もし、この侍の頼みを拒めば、この侍は自分たちをただで措くはずはないし、その乞いを容れれば、関所で当然見つかるであろうし――

(どうしたものか?)

と、権十はまったく途方に暮れて、ただ恐怖の中に茫然としていた。

すると、お松が、

「――お父っさん。あの薬、何処へやったえ。おととい、お父っさんが、荷揚げの時に摺り剥いたで、おらが深川で買ったあの貝殻薬さ」

側から不意にそういって、辺りの抽斗を掻き廻していた。

そしてすぐ、

「あったよ」

というと、磋磯之介の側へ寄って、

「お侍さん、この傷薬をつけてあげよう。耳のうしろにも、手にも血がながれているでよ」

「ありがとう」

張りつめている気分を、ふと小娘の温情に和らげられて、磋磯之介は、急にがっくりしたようにいった。

お松は、指の先に薬をすくい取って、何のこだわりもなく、磋磯之介の襟をのぞきこんだ。掠り傷ではあったが、寒風にふかれて黒く乾いた血が、糊のように下の肌着まで硬ばらしていた。

「お松、待てよ」

それを見ると、権十も、迷っていた思慮を捨てて、ついいってしまった。