Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
三
いったい今年幾歳だろう?」
時々、焦々して、怒鳴りつけることもあったりしたが、そういう時でも、
「はあ。……御尤もです。……はあ、気をつけます」
それくらいな感動を出すのが、精々なところであった。
三
生糸検査所、銀行、美術品店、商館――わずか十年前には見られなかった煉瓦造りの町に、砂糖やメリケン粉を積んだ幌馬車の馬が、鳴る鞭の下に、黄色い埃をあげて奔馳してゆく。
「あぶねえっ。気をつけろ、巡査のくせに」
砂糖馬車の馬丁にどなられて、旗岡巡査はあわてて横っ飛びに交わした。
――いつも、何か考えごとをしながら歩いているらしいのである。
屋台店で、大福餅を焼いていた親爺が、じっと彼の顔を見ていたが、
「……あっ、もしっ」
と追いかけて来ていきなりいった。
「旦那あ、もしや水戸の海後様の御次男じゃございませんか」
「……あに! あんだと?」
「そうだ! そうに違いない。――旦那、お見忘れでございますか。てまえは小石川の水戸様のお屋敷の近くに住んでいた蕎麦屋の亭主でございますよ」
「……何よういっとるか、おまえは」
「お屋敷の旦那方にゃあ、始終、御贔屓にあずかっていたんで、未だに誰方のことも時々思い出しているんで。