Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
「はい……」
「人間になってよかったな」
「御恩……一日も忘れた事はござりませぬが」
「それだけで満足」
「遂に、今日という機が参りました」
「いつかは、会うものだな。宿縁というものじゃろ。めでたい」
「――が、今日は、私事で駈けつけたのではございませぬ。御主人の明智殿事、いかなる天魔に魅入られましたか、先ごろ、信長公より中国へ御出陣の仰せをうけ、六月朔日の夜半、丹波境まで勢揃いして御発向なされましたところ、途中、遽に号令を変えられて、勿体なくも、本能寺に御宿泊中の……」
「ア。これ」
軍扇の骨が、冷やりと、わしの頬を抑えた。
「孫平治」
「……は、はいっ」
必死の訴えを、途中で折られたので、わしの呼吸は肋骨のうちで、出所を失ったように喘ぎ廻った。
「そちは、それをいうな。いってはならん」
「……では、明智殿の叛逆を、もう御存知でござりますか」
「たった今、京の長谷川宗仁の急使をうけ、仔細、聞いたばかりじゃ。……不愍ながら、使いの男は、雪隠で刺し殺した。敵へ洩れてはならぬからだ」
「…………」
わしは、そうあるはずと思いながらも、何か、張りつめて来た一心が崩れて、茫然となった。