Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lesen Sie 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 173.309 Zeichen · 352 Bildschirme
四
「……いや?」
と、それすら勇気を欠いて、独り苦しんでいる彼であった。
ばたばたと、誰か廊下を小走りに来る。お由利か? ――と右門は青白くなって耳をすました。すると、襖の外で、
「又十郎様、右門様。御次男の刑部友矩様が、お越しにござりまする」
爺やの声である。爺やとは老用人の笹尾喜内で、兄弟たちには、少しも恐いところのない好人物なのである。
「お。……御城内の兄上が見えたとか」
右門はすぐ立った。――が、指で瞼の腫れを抑え、衣紋を直してから迎えに出て行った。彼には、兄弟中で誰よりも親しめて、そして一番気のあう刑部友矩であった。
四
「爺、いつも達者だのう」
若党や小僧や、大勢の召使が式台に出迎えたが、頭の高い刑部友矩は、目もくれなかった。
ただ用人の喜内老人だけには、そう言葉をかけた。幼少の頃の友矩には、癲癇のような持病があって、この老人には、そんな世話をやかせた事だの、寝小便の癖までを、知り抜かれているからである。
だが、今は家光将軍の寵童であり、小姓組では羽振りがよいし、服装は綺羅で、容姿は端麗な彼だった。奥女中のように柳営にばかりいて、絶えず将軍家の身近くいるところから、大名たちにも頭構えの高い癖がついているので、稀、宿下がりかお使いで城外へ出ると、やたらに人間どもが賤しく見えてならなかった。