Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
Lesen Sie 梅里先生行状記 (ばいりせんせいぎょうじょうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.260 Zeichen · 418 Bildschirme
花と花
一
むしろ一同は、老公の慮りを恐懼して、
「われわれどもへ、なんのご遠慮など……」
と、いいたげであった。
老公は、座をかえりみて、
「惣左は、別間か。彼女を伴うて来た牧野惣左は」
「あちらに控えておりますが」
「呼べ」と、いう。
「はい」
剣持与平が立ってゆく。与平は満座の若ざむらいを相手にずいぶん飲んだらしく思われたが、しゃんとしていた。
惣左が導かれて来た。
老公は見て、
「こよいはご苦労」
と、いった。そして、
「――隠居所はこのとおりな手狭、あらためて通す部屋とてもない。それに、いくら年経たあいだにせよ、なお老木にも色香はある。おたがい、ひとの口端に誤られぬよう、会うのも、人中こそよけれじゃ。――お許、あのふすまを開けてくれい」
と、特にいいつけた。
惣左には、その心が、よくわかっていた。
もう四十年もまえの古い恋ではあるが、そのあいだ、相見ぬ日となってからは、ほとんど一度も会っていないふたりである。
だから老公の胸にも、雪乃の心にも、その恋は、なお青春のまま、すこしも枯れずにあるのかも知れない。
また。
かつてのふたりの恋は、きれいであったという。いやきれいなうちに、別離の日が来てしまったのだ。