Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
雨が降っていることについては、多計代は何とも云い出さなかった。食堂のヴェランダからは、雲の低いパリの空がひろく見はらせ、目の前のヴェランダはすっかり濡れているのだから、多計代にも雨がふっていることはわかっているにちがいない。伸子のはらはらする気持は、多計代をジェネ※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)行の列車の車室にかけさせてしまうまで、休まらなかった。みんなが気をそろえて、天気のわるいことにはふれないで自分をたたせようとしている。そこにこだわって、多計代がおこりだすことはあり得たし、そういって多計代がおこれば、伸子は自分として何と云いつくろうのか知らなかった。浴室へゆく廊下で泰造のああ云った言葉がなければ、伸子は、母の顔を見た最初に、あいにく雨ね、というたちなのだったから。
格別の苦情も云わず、それかと云って旅だつ楽しそうなところもなくて、両親が並んで乗っている列車が発車してから、伸子は寂しいきもちで、モンソー・エ・トカヴィユまでタクシーを駛らせた。
十時半にホテルへ磯崎須美子が来るはずになっていた。十一月はじめにマルセーユを出帆する太洋丸で日本へかえる須美子は、伸子とおちあって百貨店プランタンへ子供の旅仕度のための買物に行く手筈にきめてあったのだった。