Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
十六
雨にぬれて人通りのないパリ郊外の街は静かで、日ごろから門の扉もあけはなされたまま荒れるにまかされている蜂谷の下宿の前庭には、浅い水たまりが出来ている。伸子は、誰も住んでいない一階の隅から、二階への階段をのぼって行った。ぬれた靴が、階段に跡をつけるのを気にしながら。
伸子は、下宿の未亡人が暮している一つの室のドアをノックした。
「おや、マドモアゼル」
「こんにちは、マダム。蜂谷さんはおいででしょうか」
「ええ、ええ、おいでですよ。彼はすこし工合がわるいようです、ゆうべも、けさも食事をなさいませんでしたよ」
いまは、どうしているかしら、という風に下宿の未亡人は、先にたって階段ぐちの廊下の右手にある蜂谷良作の室をたたいた。
「おはいり」
ぐったりした蜂谷の声だった。
「マドモアゼル・サッサですよ」
戸口に伸子と並んで立って寝台によこになっている蜂谷を見、茶色のエプロンをかけた未亡人は頭をふって戻って行った。
「どうなすったの?」
伸子は寝台に向ってふたあしみあしすすみよった。
「かぜ?」
「――どうしたんだか、わからない」
「きのうから?」
枕につけている頭で、蜂谷はこっくりするようにした。