Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
「ネチャエフという男は、大した男だ」
と云った。
「つかまって、牢屋へぶちこまれて、いくど法廷へひっぱり出されても何一つ組織については云わなかった。それをよんで、きみが適当だと思う部分だけ翻訳すればいいんだ」
いや応ない山上の口調であった。
「それは、いそがないから、ゆっくりでいい。もっとも六月の半ばになれば、僕はクリミヤへ行ってしまうがね。日本のインテリゲンツィアは、あんまりいくじがないから、ひとつ、ネチャエフみたいに、しっかりした男もあるってことを教えてやる必要がある」
ネチャエフは、ヴェーラと同時代の人だった。一八〇〇年代の終りの革命家たちであり、ロシアの革命がテロリズムからマルクス主義の革命の方向に発展してゆく過程の人たちなはずだった。日本のインテリゲンツィアが、いくじがない、と云う山上の批判の内容が伸子にわからなかった。同時に、革命の歴史のちがう人民の意志党の英雄の伝記が、きょうの日本の人たちにどんな直接の影響をもつのかということも、伸子にのみこめなかった。
のみこめないままに伸子は紙の端々の黄ばんだ二冊の本をかかえて、リュックスを出た。
十五