Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
――誰もいやしないのに」
「なに、あいつらのどっちかだ」
はなれたところにいる男たちをにらむように、素子が云った。
「うしろを通りぬけたと思ったら、もう撫でやがった」
素子は、おこった表情で、けんかでもしかけたように下顎をぐいと掬い出して、また男たちの方を見かえった。
「見ないでおきなさいよ」
伸子が、半ばおかしさをこらえたまじめさで注意した。
「なお面白がることよ」
「パリの男って、何て器用な撫でかたしやがるんだろう。さわったかさわらないで、ちゃあんと撫でてやがる」
メトロが来た。伸子がさきに乗りこんだ。つづけて乗りこもうとしたとき素子が、伸子にもきこえたほどきつく、
「チェッ!」
と舌うちした。
「どうしたの?」
「また撫でやがった」
しかし、男たちは、伸子と素子の乗ったその車室のなかへは、はいって来ていないのだった。
四
二つ並んでおいてある寝台の一つに、素子が臥ている。シーツを体の上にかけて、左の頬っぺたへ当てている氷嚢がずり落ちないように、白い布でくくった蝶むすびがつったっている。頭を、高く重ねた二つの枕の上において。激しい歯痛がおこって、昨夜ちっとも眠れなかった素子は、氷を当ててからやっと落ついた。