Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

伸子の心は次第に重心を沈め、心の足の裏がふみごたえある何ものかにふれはじめた感じだった。それは伸子に、ものを書きたい心持をおこさせはじめた。

丁度そのころ、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の雪どけがはじまった。伸子の住んでいる建物の板囲いのなかにも、往来にも、並木道の真中にも、雪解けで大小無数の水たまりが出来た。昼間、カンラカラララと雨樋をむせばしてとけ落ちている屋根の雪や往来の雪は、はじめのうちは夜になるとそのまままた凍った。柔かい青い月光が、そうやって日中に溶けては夜つるつるに凍る雪を幾晩か照し、やがて、もう夜になっても雪は凍らなくなって来た。そうなるとモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)じゅうはねだらけの、ほんものの早春が来た。馬も人もはねだらけになって往来し、冬のうち積った雪に吸いとられていた生活の音響がゆるんだ雪の下からいっせいに甦って来た。道のひどいぬかるみと、抑えるに抑えきれないような生命のそよぎ、歩くどの道もいまにも辷りそうにつるつるしたこわさなどで、にわかに重さの感じられる冬外套の下で伸子は汗ばみながら上気した。