Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
三
三
八月にはいって間もない或る雨の日のことであった。きのうも一日雨であった。しっとり雨をふくんだ公園の散歩道にパラパラと音をたてて木立から雨のしずくが落ちかかり、雨にうたれているひろい池の面をかなり強い風が吹くごとに、噴水が白い水煙となってなびきながらとび散った。
人っこ一人いない雨の日の大公園で、噴水を白く吹きなびかせている風は、パンシオン・ソモロフのヴェランダのよこの大楓の枝をゆすって、雨のしずくを欄干のなかまで吹きこませた。この北の国の夏が終りに近づいた前じらせのように大雨が降っている古いヴェランダの端から端へとぶようにして、老嬢のエレーナと伸子とがマズルカを踊っていた。いつものとおり黒ずくめのなりをしたエレーナの細くて力のある手が、くいこむようにきつく伸子のふっくりした若い手をとらえていた。伸子には鉤のように感じられるその手でエレーナは伸子をリードして、黒いスカートをひるがえしながら、頭をたかくもたげ、伸子にはどこにも聴えていないマズルカの曲を雨と風とのなかにききながら踊る。ほそい赤縞のワンピースを着ている東洋風になだらかな丸い曲線をもった伸子の体は、エレーナの大きく黒く蝙蝠がとぶような動きに絡んでギャロップした。