Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どうひょう

道標

宮本 百合子

Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme

Aozora Bunko

十分もすると吉之助は、ちょっと今のうちにすまさなければならない荷作りがあるから、と自分の室へ戻って行った。

娘たちは、しきりに吉之助の立つ時間をきいた。それは、伸子たちも知っていないのだった。もう引きあげなくてはならないとわかりながら、吉之助を待って二人の娘たちが長椅子の上でおちつかなくなりはじめたとき、せっかちに伸子たちの部屋をノックするものがあった。

「おはいりなさい」

「こんばんは」

鞣の半外套を着て、小さいフェルト帽をかぶった中ぐらいの体つきの若くない女が入って来た。

「わたし、テルノフスカヤです――日本にいたことがある……」

伸子は、思いがけないことに思いがけないことの重なったという表情で、ゆっくり椅子から立ち上った。テルノフスカヤという女のひとの名は、革命当時シベリアのパルティザンの勇敢な婦人指導者であったひととして、日本へ来ていた間はプロレタリア派の文学者たちと結びついて、伸子たちにも知られていた。このモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)でもむしろ、ホテル暮しなどをしている自分たちとは政治的にもちがった環境に属す人として、伸子も素子も、テルノフスカヤが今晩不意に現れたことに意外だった。