Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
ミカンの汁を吸わすのは素子だ。見ないだってそれはわかっている。ミカン――マンダリーン。マンダリーンチク。プーシュキンは、どうしてあんなにたくさん果物の名を並べたんだろう。アナナースとマンダリーン。それを、素子が韻をひろって、雑巾のこまかい縫めのように帳面のケイをさして行く。おかしなの。詩を韻だけで書くなんて――愚劣だ。
やがて伸子にだけ与えられている暗やみの中で、素子が、ミカンここへおいとくからね、と云った。またあした午後来て見るからね、と云った。そして素子はいなくなった。男の声と女の声との、ごろた石の間をゆくような発音の会話はまだつづいている。
目をあいて、伸子は自分のおかれている病室の早い朝の光景を見た。同時にはげしい脇腹の痛みを感じた。ベッドのわきの小テーブルの上にあるベルを鳴らして便器をもらった。雑仕婦が用のすんだ便器をもって病室を出てゆくと、隣りのベッドの上に起きあがっていた中年の女が、
「こういうところで、ものをたのむときにはブッチェ・ドーブルイ(すみませんが)といった方がいいんですよ」
と教えた。
「あのひとたちはみんな忙しいんですからね」