Japanische Klassiker mit Furigana
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どうひょう
道標
宮本 百合子
Lesen Sie 道標 (どうひょう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 846.457 Zeichen · 1672 Bildschirme
船から見物にあがって来た群集がショール売りの婆さんのまわりに群れていた。そのひとかたまりの群集も、口々にがやがや云っている彼等のまとまりのない人声も、みんなひろいヴォルガの水の面と高い九月の空に吸いこまれて、群集は小さく、声々はやかましいくせに河と空とに消されて静かだった。伸子が買ったヴィヤトカ・ショールはあんまり上等の品でなかったから、そうして枕の上でかぶっていても頬にさわるとチクついた。
ノヴォデビーチェの部屋は解約した。伸子の容態に見とおしがついたから、東京の佐々の家へ大体の報告をかいてやったことなどを素子は話した。
「どうもありがとう。いまにわたしも書くわ」
「おいおいでいいさ。いずれぶこちゃん自身で書くがと云っておいたから。――ノヴォデビーチェじゃびっくりしていたよ、ぶこが入院したと云ったら。お大事にってさ」
「――あの犬の箱みたいなディヴァン、まだやっぱりあの壁のところにあった?」
「あったさ」
素子は、ちょっと寂しい室内の光景を思い浮べる表情をした。
「――あすこは妙なところだったね」
そこへ伸子一人をやったことをいくらか気の毒に思う目つきで早口に云った。