Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

何たる不幸つづきか。二十一歳の謙三郎は、途方に暮れた。

「これからは、あなたがここの柱になるのではないか。貴公がそんなに嘆いてばかりいては、お妹の英さんも、どうしてよいか分るまい。お察しはするが、気を取り直し給え、もっと元気に」

兄の友であり弟子であった山岡鉄舟から、こう励まされて、

「そうだ、いや、お恥かしい」

謙三郎も、すぐ気づいた。そして一心不乱、道場に立って、一槍に心胆を凝すことを以て、独り淋しさを慰めていた。

けれど余りにも、優しかった兄、弟思いな兄、また力と恃んでいた兄に、突忽と、現し世の姿を眼の前から掻消されてしまったので、多感な謙三郎は、

「兄恋し」

の想いを、どうしても、脳裡から拭き去ることができなかった。

槍を持てば、槍を持つ兄の姿が憶い出され、飯を噛めば、共に膳をかこむ兄の姿や言葉がありありと偲び出される。飯を噛み噛み茶碗の中へ、われ知らず涙をながしているのに、はっと気がつけば、さし向っていた妹の英子も、わっと箸をおいて泣き出すようなことも屡であった。

「ああ、だめだ。兄の偉大が、今わかった。兄の愛情が、骨身にこたえる。生き残って、この任を負い通せるわしではない。