Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
卒塔婆の文字、――清勝院殿法授静山居士――と読み下すと共に、彼は、そこまで追って来た慕わしい恋しい兄が、何ものであったかはっきり覚った。一塊の土塊に寄せるべく余りに彼の情涙は熱かった。土を抱いて泣き伏したまま、
「もう一度。……もう一度お姿を」
と、凡愚の子の極りもなく訴えた。
残月は冷やかに、彼の乱るる鬢髪の一すじ一すじを照らしていた。霜は彼の涙に溶けても、土は物云わず、風も答えない。泥舟は、何かふッと、人間の儚さ、無常観といったようなものに囚われたらしい。いやひたむきな性情は、遂に、地下の兄の魂魄をもって抱きつかなければ熄まない衝動に駆られたものとみえる。やにわに、諸肌を脱ぎ、脇差を引き抜くよと見えたが、
「ゆるして下さい。兄上、わたくしも」
脾腹へ突き立てようとした。
それより前に、高橋家の人々は、
(ゆうべも、おとといも?)
と怪しんでいた折ふし、こよいまた、泥舟が狂せる如く、何処へともなく走り出て行ったので、ちょうど泊り合せていた妹の英子、山岡鉄舟、下僕や門人など七、八名して、闇夜ではないが町方などへの証のため、提灯を打振りながら、
「おおうい。