Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

一すじの霜もなかった。皮膚はほの赤く緊まり、田舎人のように少し肥えてすらあった。

衣服もここらの在所の女房たちが着る粗末な物と変らないのを纒っていた。裾短に括っている山繭の腰帯もそれも自身の手織りなのである。

戦場の寺住居ではあったが、空地には、桑畑もあり機屋もあった。それを染める染瓶も備えてあった。将士の家族や百姓の女房たちに教えて、ここの兵站部では、平常、衣食住あらゆる物を自給自足していた。

亡き良人の位牌、また、一族の誰彼と、数限りなく本堂の壇にならんでいる護国の英霊の前に、朝暮、陰膳を参らせる時のほかは、めったに裲襠の裳を曳いてはいなかった。

ゆうべも殆ど眠っていない。

かねて覚悟の日。

(こたびは生きて還りませぬ)

と門立つ子らに対しても云うべきことは平常に尽してある。この期においては、涙もないのである。

むしろその子らにも、生きて還らぬ部下たちにも、一椀の温かい汁でも――と彼女はつい今し方まで、下部たちを指図し、自身も大厨に立ち働いて、水仕の業をしていたのであった。

先には、まだ仄暗いうちに、二千余騎の将士が、白い息を吐いて、ここを発し、今また、正行以下が最後の別れを告げて立たんとするのであった。