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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

年は明けた。日本じゅうの憂いの中に。

血腥い木枯らしの矢叫びは、元日とても吹き荒んだ。低い冬雲の乱流する下、葛城連峰から飛ぶ粉雪の果て、

「戦は。――勝敗は?」

と、留守の東条の人々は、河内の野を、心配にみちた眼で、見まもっていた。

兄の正行が出陣の折、吉野の仮宮まで、行を共にして、そこから別れて城寨へ帰って来た三男の正儀は、戻るとすぐ、母の居間に姿を見せて、

「母うえ。お欣びなされませ」

と、復命した。

正儀の伝えに依れば、後村上天皇には、正行が、よそながら今生の御いとま乞いにと伺候した心のうちを、疾くお察しになって、冬風のふせぎも粗末な仮御所の階の下、間近まで、正行を召されて、御簾をさえかかげられ、

「朕は汝を股肱とたのむぞ」

と、親しく仰せられたという。

「ありがたい、勿体ない、御諚ではござりませぬか」

語りながら正儀が、鎧の袖を顔へ押当てて涙すると、母の久子も、この日頃、一しずくも見せなかった涙を、一度にはふりこぼして、

「勿体なや」

急いで膝を、吉野の仮宮のほうへ、正しく向けかえ、伏し拝んで、

「……そして、正行は」

「余りの畏れ多さに、兄は、何のお答えもよう申し得ませぬようでした。