Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
この正月を迎えて、二十歳となった正儀のすがたをじっと見てである――
「一天の大君さまの御口ずから、臣下の正行へ、汝を股肱とたのむぞと御諚あそばされたことは、まこと正行のほまれ、亡き父君にも、御満足に在すらめとはふと思うたが、深く思えば、この御国に、こうした畏れ多いことのあってよいものか。――お汝もはや二十歳ぞや。父君の御遺訓、よも忘れはあるまいの。朝廷への御奉公にかけて、兄たちに劣るまいぞ。留守は、お汝が総大将、母は、どこまで家の母じゃ。士たちの指揮、心がまえ、忠義一すじの鍛え、皆お汝が軍配と徳にあること。きょうよりはなおなお、心して賜も。その身を、父君や兄達の亡き後の三世の忠義に備えておかれよ」
「わかりました。よくわかっておりまする」
正儀も咽び泣き、彼の母も、ほかに従者や幼い者がいなかったせいか、いつになくしばしば袖口を瞼にあてた。
正儀は、母のそのすがたが、巨きな慈愛の樹のようにながめられた。
その大樹は、年経るごとに、枝を伐られ、葉をふるい落されてゆく。良人の正成、良人の弟正氏、また、里方の兄南江正忠と、次々に戦死し、一族遠縁の人々までも、それからそれへと梢から去って行った。