Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
――その時、ふと気づくと。
城寨の山々は急に湖のような寂寞になっていた。跫音もさせぬ静かな一すじの列が、水の流るるように、総門のほうからここへ上って来るのが見えた。
その列の先に見えた人は、葛城の峰の雪よりも真白い喪服を着、白木の台に白い覆布をかけたのを捧げていた。覆布の下には、血にそんだ鎧の草摺の片袖と、血糊によごれた黒髪とが載せられてあった。
今し方、戦場から拾われて来た正行と、弟正時の遺物かと思われた。
喪服して、それを出迎え、捧持してくる女性は、いうまでもなくその正行、正時を生んだ母なる人である。
正儀、正秀、正平、留守の兄弟たちも、俯向きがちに母に従って来た。従者や老臣は涙を拭うていたが、久子の面にも、兄弟たちの眼にも、涙はなかった。むしろ次々に自分らもやがて赴く殉国の日を思うて、強烈な意志と誓いとを、悲痛な眉のかげに湛えていた。
「母さま。――何? 何? それ何?」
いきなり駈け寄って行った末子の朝成は、母の喪服へ縋って訊ねた。
「お兄様たちが、お帰りになったのじゃ。大人しゅうそなたも来やれ」
「どこへ。どこへですか。母さま」
「お父君が、いつもお在で遊ばすお部屋に。