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Japanische Klassiker mit Furigana

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けんのよんくんし

剣の四君子・日本名婦伝

吉川 英治

Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme

Aozora Bunko

一

義経はもろ肌を脱いで、小冠者に、背なかの灸をすえさせていた。

やや離れて、広縁をうしろにし、じっと、先刻から手をつかえているのは、夫人の静の前であった。

八月の真昼である。

六条室町の町中とは思えぬほど、館は木々に囲まれている。照り映える青葉の色と匂いに室内も染りそうだった。

――が、静にとって、気になるのは、二十九という良人の若い肉体まで、そのせいか翡翠を削ったように蒼く見えることだった。

「…………」

蝉の声ばかりであった。小冠者は細心に、主君の肌へ火を点じていた。

義経は、熱いともいわず、身もだえ一つしなかった。けれど、見ている静のほうが、その一火一火に、骨のしんまで灸かれるような怺えに締めつけられていた。

(――お熱くはないのかしら)

と疑うように、小冠者はそっと、主君の肩ごしにその顔をのぞいてみた。

やはり彼とて熱いには違いない。義経は、眼をふさぎ、奥歯をかんで、鼻腔でつよい息をしていた。

――と。ふいに、義経は、

「静」

と振向いて、さっきから返辞を待っている妻へ、こう云った。

「通せ、景季を。――会ってやろう」

「えっ……。では、お心を取直して」