Japanische Klassiker mit Furigana
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けんのよんくんし
剣の四君子・日本名婦伝
吉川 英治
Lesen Sie 剣の四君子・日本名婦伝 (けんのよんくんし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 150.635 Zeichen · 306 Bildschirme
一
暁からの本能寺の煙が、まだ太陽の面に墨を流しているうちに、凶乱の張本人、光秀の名と、信長の死は、極度な人心の愕きに作用されて、かなり遠方まで、国々の耳をつらぬいて行った。わけても、勝龍寺の城などは、事変の中心地から、馬なら一鞭で来られる山城国乙訓郡にあるので、桂川の水が、白々と朝を描き出した頃には、もう悍馬を城門に捨てた早打ちの者が、
「たいへんだっ」
と、人の顔を見るなり誰にでも呶鳴って、やがて転ぶが如く、奥曲輪のほうへ馳けこんでいた。
天正十年六月二日であった。
木々の露が香う。風が光る。
この頃の夜々の眠りの快さは誰しもであろう。起きてすぐ若葉に対う目醒めもすばらしい。
生きていればこそと、生命の味いと幸を、改めて思うほど、肌をなぶる朝風も清々しい。
「…………」
朝化粧をすましてもまだ彼女は、鏡に向って、恍惚としていた。
わが姿の清麗に、見恍れていたわけでもない。生命に感謝していたのである。
「――自分ほど幸福なものがあろうか」と。
幸福というものは、幸福と知った時、心から感謝しておかなければ、幸福とも思わず過ぎてしまうものである。――だから迦羅奢は、